いじめは、パワーゲーム

ちょっとこのアンケートを見てください。

これは、『いじめを許す心理』(正高 信男著)で、

実際に中学生にアンケートをした質問です。

あなただったら、どれを選びますか?

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クラスメートの行動に対し、あなたはどうしますか?

1.同じ行動を率先してとる。

2.積極的には行動しないが、悪口に話を合わせたり、

無視する程度はする。

3.関与しない。見て見ぬフリをする。

4.止めさせようと、他の級友に働きかける。

5.先生に報告する。

6.見たその場で止めさせる。

7.その他(                )

A.被害者タイプ:肥満

Aは太った子で動作が鈍い。クラスの数人が「デブ」「見苦しい」などと持ち物に落書きした。また、Aのパンをつぶしたりした。

B.被害者タイプ:優等生

Bは成績が良い。まじめなので、私語やお菓子を食べる級友を注意することもあった。そんなBに「自分だけ良い子ぶって」と、無視をしたり、教科書をゴミ箱に捨てたりした。

C.被害者タイプ:自分勝手

Cは自分勝手で、掃除をしなかったり、ノートを写させてもらうことがあった。クラスの数人が授業のグループ分けでCを仲間はずれしたり、教科書を隠したりした。

D.被害者タイプ:ウソつき.

Dは約束を破ったり、口実を言い張る性格。クラスの数人がDを仲間はずれにし、「ウソつき、ウソつき」とののしるようになった。

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「いじめ」という言葉を入れると、

いじめをしている本人も

「悪い」「いけない」と答えます。

なので、

正高氏は「いじめ」という言葉を使わず、

いじめのエピソードを使うことで、

より本音を聞き出すようにしました。

すると、下のグラフのような結果が出ました。

この回答の

1と2は、「加害」に同調するいじめっ子タイプ。

3は、「傍観者」タイプ。

4〜6は、「解決」をめざそうとするタイプです。

注目したいのは、

「いじめがないクラス」に、

加害者タイプの子がいないわけではないのです。

「いじめがあるクラス」と同じくらい

加害を選ぶ子がいます。

つまり、どんな場所にも

加害タイプの子はいるんですね。

では、なぜ

「いじめがあるクラス」と、

「いじめがないクラス」が、

できるのでしょう?

その違いは……

「解決者と傍観者の数」です。

加害タイプの子の行為を、

周囲が「解決」するか、「傍観」するかによって、

いじめが生まれていたのです。

つまり、いじめは、

「傍観者の数によって左右されるパワーゲーム」。

このように、いじめが起きるのは、

「自分には無関係」といじめを見逃す傍観者が多いとき。

それが「いじめ磁場」です。

クラスのみんなだって、本当は

いじめなんかない方がいいに決まっています。

しかし実際には、傍観者や加担者になってしまうことが多いのは、

次のような気持ちからではないでしょうか。

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自分がいじめられるターゲットになったら困る

言ってもムダ。いじめっ子もやめないし、

学校の先生や大人も頼りにならない

自分さえ安全だったらいい

自分には直接カンケーない

目立つといじめられる。目立ちたくない

誰かが言い出したら、ついて行こう

人数の多い方にいれば安心

良心 無力感 正義感 フタをする

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